今回ご紹介するのは佐藤大介さんが書かれた『13億人のトイレ 下から見た経済大国インド』という本です。
「経済大国」「人口世界一」「IT大国」などといった輝かしくエネルギーに満ち溢れたイメージのインドですが、その実態に“トイレ”から迫る!
Amazonの商品説明欄より引用↓
トイレを見れば、丸わかり。都市と農村、カーストとイノベーション……
ありそうでなかった、「トイレから見た国家」。
海外特派員が地べたから徹底取材!!
インドはトイレなき経済成長だった!?
携帯電話の契約件数は12億件以上。
トイレのない生活を送っている人は、約6億人。
経済データという「上から」ではなく、トイレ事情という「下から」経済大国に特派員が迫る。
モディ政権の看板政策(トイレ建設)は忖度の産物?
マニュアル・スカベンジャーだった女性がカーストを否定しない理由とは?
差別される清掃労働者を救うためにベンチャーが作ったあるモノとは?
ありそうでなかった、トイレから国家を斬るルポルタージュ!
今後急成長が期待される国「インド」!

今回は「有名だけど実態はよくわからない国」という、私の中で勝手なイメージを抱いている「インド」について実態を知るべくこの本を読んでみました!
インドは世界第2位の人口を誇る国で、ある調査では2022年末には中国を抜いて人口1位になったとされています。
また、その人口の半分が「30歳未満」という“日本とは真逆”の若くて勢いのある国で、今後その人口ボーナスを武器に「世界で最も急成長する大国」と見込まれており、2028年には国内総生産(GDP)で日本とドイツを抜いて世界第3位に躍り出るとの予測もあり、投資家たちからも熱い視線を注がれている国でもあります。
謎の多い国「インド」の実情に迫る!

そんな魅力的な市場であるインドですが、私をはじめとする多くの日本人にとって、その存在は謎に包まれており、知っていることといえば「カレー」「ヒンズー教」「ヨガ」「仏教」ぐらいのものではないでしょうか?
本書ではそんな日本人にとっては謎の多い国である「インド」という国を、ITや経済などのキラキラとした面からではなく、「トイレ」という下流から国の真相に迫るという面白い切り口で話が進んでいきます。
日本人が知らない「史上最大のトイレ作戦」と、インドの野外排泄人口の多さ!

と、いうのも、インドでは2014年にモディ首相が「スワッチ・バーラト」を重要政策として打ち出しており、これこそがインド国内で「史上最大のトイレ作戦」と報じられ、外国からも注目を集めたことでインドの「トイレ事情」が世界に知れ渡った(とはいえ日本人のほとんどは知らない)という背景があります。
経済大国として期待されているインドですが、2011年の調査ではトイレを持たない世帯の割合は53.1%にのぼっており、13億人の人口のうちの半数以上がトイレの無い暮らしをしていることが報告されています。
ユニセフの調査では、全世界で野外排泄をしている人の数も示されており、その数は約9億6400万人とされ、そのうちの約5億6425万人がインドの「野外排泄人口」であることから、世界の「トイレなし人口」のうち、実に6割ほどがインドに集中していることがわかります。
ただ、野外排泄が多いだけならまだしも、野外排泄中の女性を狙った事件などが多発しており、国としても無視できない状況になっているようです。
この実態の背景にあるのがインドに根付いた「カースト制度」であり、カーストの最下層である「ダリッド」とされる人たちが不衛生で悪質な環境でトイレ掃除などを行っている現状があります。
その他、国の肝入りの政策である「スワッチ・バーラト」さえも役人による不正の温床になっているなど、これから急成長を期待されている国に潜む潜在的なリスクなどについても知ることができます。
まとめ

「インドに行くと世界観が変わる」という話をよく聞きますが、日本人には想像できないくらい貧富の差が激しかったり、他人の家から電気を盗んだり水を盗んだりということは日常茶飯事です。
聖なる川であるはずの「ガンジス川」は生命の危険にさらされるほどの深刻な水質汚染にさらされている(100mlあたりに含まれる糞便性大腸菌が、基準値の9〜10倍に達している)にもかかわらず、川で洗濯をし、顔を洗って歯を磨き、火葬した後の遺灰や、排泄物までもそのままガンジス川に放ってしまうインド人の生き様を見ると、日本で衛生的に過ごしてきた多くの人たちからすると、確かに世界観が変わってしまうぐらいの衝撃を覚えるだろうなと感じます。
トイレに対する日本人との意識の違いや、日本企業「リクシル」や鳥取県米子市に本社のある「大成工業」の汚水を処理するシステムなどがインドに貢献していることなど、知らないことが山盛りで個人的には大変興味深く読むことができました。
しばらくは日本のトイレ事情も含めて「トイレ沼」にハマってしまいそうです^^;笑
トイレからインドという国の歴史や文化、宗教について学んでみたいという物好きな方にはおすすめの一冊です(^^)
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